WEBときどき人事

渋谷のITベンチャーで働く元人事、現メディアのディレクションにいきる僕が日々学んだことをメモするお

内定を持たない多崎つくると、その獲得の旅。〜自己アピールをめぐる冒険〜

「ねえ、つくる、君は内定を手にいれるべきだよ。どんな事情があろうと。私はそう思う」(色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年)※一部編集

僕もそう思う。 

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

 

 

本家恋愛工学が「結局身体目的なんじゃないか!」とよく批判されるように、採用工学も「ただの内定目的じゃないか!」という黒ずくめの男たちからの声が徐々にあがりはじめている。

言いたいことはわかるが、それでも恋愛工学が愛を証明しようとしていることに敬意を払い「ぼくは採用を証明しようと思う。」

ぼくは愛を証明しようと思う。

ぼくは愛を証明しようと思う。

 

 

┃君が好きだと叫ぶことの危険、叫ばないことの危険

前回のエントリーで提示した脱ハルキ理論は大事なコンセプトである一方、捉え方を間違えると大きなリスクを伴うことになるし、実際に読者からはアピールしないことが良いのかというような危険な認識も寄せられた。しかし、本家恋愛工学でもその認識は大きな危険をともなうことが既に証明されている。

何の自己アピールもしないほうがいいのか? じつはそれもダメなのだ。ここが自己アピールのむずかしいところなのである。つまり、何の自己アピールもしなかったら、女は単にその男のことを、価値の低い男だと認識するだけだ。それでは、次のフェーズに進めないし、進めたとしても、友だちフォルダに入ったままになる。(週刊金融日記 第110号 )※一部編集

恐怖の「お友達でいよう宣告」だ。

例えば、恋愛において、お金持ちがお金もっていることをアピールすると非モテコミットに陥るし、お金がない人がお金ないことを話しても何のアピールにもならずに結局自己アピールが成功しない。

同様に、就職活動でも、優秀な学生が自分は優秀だから採用してくれという直接的なアピールをして「謙虚さがない」という(大くの場合は後からとってつけた)理由で落とされ、反対に自分には何もやってきた経験がないからと面接でほとんどアピールせずに、「いい子だけどね…」という感想とともに人事の目に止まらない学生を多くみてきた。

┃「発見と想像」の面接イノベーション

ビジネス書っぽいタイトルにしてみたが、ずばり非モテコミットに陥らない自己アピールはこの2語に藤沢先輩が既に要約している。(にしてもこの人はどれだけ研究したのだろうか…)

すでに高いソーシャル・バリューがある男性は「発見」、そしてこれからそれを手に入れる男性は「想像」を引き起こすことが、自己アピールの成功の鍵だ。(週刊金融日記 第110号 )※一部編集

そう「発見」にせよ「想像」にせよ、この戦略におけるKSF(キーサクセスファクター)は

相手が自発的に自分の価値に気づく状況をつくることである。

┃優秀な多崎つくると、その発見の時

ソーシャルバリューがある。就活においては大学もいいところをでており、学生団体でも部活動でもアルバイトでも人に語れるようなエピソードがあり(少なくても自分はそう思っている)、頭脳明晰。このような優秀なつくる君のケースを見てみよう。

面接官「学生時代何をしてきたか教えてください」 

優秀なつくる君「はい、僕は大学ラグビー部の選手コーチを努めておりました。全国優勝を目指すチームにあってはじめは選手として入部したのですが、自分の怪我もあり、チームメイトの役に立つ、縁の下の力持ちのほうが向いているのではないかと先輩にすすめられコーチに転身しました。はじめは悔しさもありましたがみんなの笑顔や選手からの「ありがとう。つくるがいて助かった」という声を励みに頑張りました。途中で部員のモチベーションがさがってしまうこともあったのですが、その時は1人1人と話あい選手のうちまで言ってコミュニケーションをとることでチームの潤滑油となり、結果的にチームを一部昇格に導きました。 

なんて素晴らしいエピソードだ。エントリーシート書き方入門の見本にのっていてもおかしくない。でも敢えていおう。そこそこ出来る採用担当ならこう思うはずだ。

体育会、利他的、継続性、チームワーク、感謝のパターントークキタコレ(就活が目的化しているモテない子なのかもしれない…)

繰り返すが優秀なことを自分からアピールするほど痛いことはない。このケースで有効な戦略としてワークするのが「発見」してもらうことなのである。

面接官「学生時代何をしてきたか教えてください」

優秀なつくる君「はい、ラグビー部で選手コーチを努めてました。」

面接官「いい身体しているのにコーチだったんだ?」

優秀なつくる君「はい、2年まではレギュラーだったたのですがそこで怪我をしてしまいまして。」

面接官「(そうか選手としても活躍してきたのか)すぐに割り切れた?」

優秀なつくる君「もちろん、悔しさもありましたし、やめようとも思いました。」

面接官「でもコーチになったんだよね?」

優秀なつくる君「コーチになって退部を考えていたとき、先輩から助かるわ。って言われたんですよね。その言葉が忘れられなくて…」

面接官「(貢献するということが実は好きな子なのかもしれないな)…」

面接官がつくる君の優秀さを自ら「発見」しているのだ。

就活生にはぜひ読んで欲しい中川氏の内定童貞の中でも合コンで男が

ほら、僕って人に貢献することに生きがいを感じるタイプじゃないですか?

などと言ったらドン引きなのに、なぜ就活だとそれが良しとされるのか?というような問題提起をしていて爆笑した覚えがある。

内定童貞 (星海社新書)

内定童貞 (星海社新書)

 

※この書籍は就活を真面目に考えすぎている、ある意味何も考えていない人は本当に読んで欲しい

会話がこんなに盛り上がらないでしょ…と思うかもしれないがその時はその時でいいではないか。

事実を語ればよく、企業に迎合する必要など一切ないのだ。

┃優秀に見えない多崎つくると、その想像の時

ソーシャルバリューが低い(と一般的に思われがちである)多崎つくる君のケースである。例えばシグナリングのひとつの指標である(あえて否定しない)学歴も低く、人に語れるようなエピソードも特にない(と自分では思っている)ケースである。ただひとつアイドルのおっかけであることをのぞいては。

結論からいうと、このケースは活躍しそうだなと「想像」させることが重要なポイントとなる。

面接官「学生時代何をしてきたか教えてください」

つくる君「アイドルのおっかけしかしてません。好きなアイドルグループがいて、ライブには欠かさずいってました。」

面接官「チケット取るの大変なんじゃないの?」

つくる君「大変ですがアイドルのためにあらゆる方法を駆使します。まずWebエントリーでは友人に頼みこみ複数のエントリーを行います。10%くらいお小遣いとして手数料を払えばみんな協力してくれます。どうしてもだめなら現地にいって余っている人から譲ってもらいます。」

面接官「そ、そうなんだ笑。好きな曲とかあるの?」

つくる君「サード・アルバムの3曲目ですね。あの曲にはデビュー当時の青臭い青春がつまっている」

さて、どうだろう。

社会人の方なら気がつくと思うが、このつくる君、ビジネスではまればめちゃめちゃ活躍しそうじゃないか?

好きなアイドルのチケットを獲得するというミッションの達成のための戦略性、
人を巻き込む力、諦めない気持ち、行動力、記憶力、洞察力ともに抜群。

Ctrl+Rを押して「好きなアイドルのチケット」を「大型の受注」に変えてみたらいい。

一見するとソーシャルバリューが低い学生が大いに活躍する姿が「想像」できるだろう。

┃僕は採用を証明しようと思う

まとめるならばソーシャルバリューが高い学生が狙うべきは「発見」

反対に低い学生が狙うべきは「想像」なのである。

この採用工学を理解せずに一般化されすぎたテクニックを使うと痛い目にあうので
本当に気をつけたほうがいい。

ちょっとまてって、こんなテクニックを使って内定取ってなんの意味があるかって?

逆である。

本来は活躍し企業で輝けるはずの人たちが、ちょっとしたコミュニケーションテクニックを知らずに面接で落ちてしまっているのである。

採用工学はこうした不幸をなくすための学問であることをここに明記し、
就活美談軍が語らないベールにつつまれた真実を明らかにしていく。

┃次回予告

 ・採れないから採れない、学生もモテない企業をすきでない。